ドイツは日本と比べると社会保障制度がしっかりしています。
無料の医療費、無料の大学の学費、5年間支払えばもらえる年金、数年支払えば少なくとも1年間は保証される失業保険・・・
しかし、もちろんそのための代償は払っています。
そうです、セーフティネットを強化するために、健全な社会人が支払う税金が高い!
具体的にドイツの税金はどれくらい高いのか。
今回は、ドイツの税金、主に会社員の状況についてご紹介します。
ドイツの会社員が支払う税金
ドイツの企業で働いている場合、給与をもらう際に引かれる税金には以下のものがあります。
- 大きく分けると所得税と社会保険
- 主な社会保険は【健康保険・失業保険・雇用保険・年金(住民税はない)】
- もと西ドイツ側は東側との格差をなくすための税金がある
- 日本のような非課税補助制度はない
どういうことなのか、詳しくみていきましょう。
所得税と社会保険
ドイツで会社員として働いた場合、日本同様、所得税や社会保険が差し引かれます。
税率は、社会保障制度がしっかりしているので、当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、日本よりずっと高いです。
例えば扶養家族がいない場合、ドイツでは給与の約4割が税金に取られてしまうのです。
手取り、本当にこれだけなの???
税金の種類と支払い率
最初に給与明細をもらった時は驚きました。
日本の感覚だと「これで生活できるの?」と思ったくらいですが、うまくしたもので食費も安いし医療費はかからないし、生活はちゃんとできました。
いったいどんな税金の種類があるのでしょうか。
内訳と税率を表にしてみました。
税金の種類とおおよその税率(扶養家族なし):
- 所得税 18.8%
- 連帯付加税 1%
- 教会税 8-9%
- 健康保険 8.2%
- 年金 9.4%
- 失業保険 1.5%
- 介護保険 1.2%
日本になくてドイツにあるのは、東西ドイツの格差減少名目の旧西ドイツ地域に加算される連帯付加税です。
東西ドイツ統一後にできた税金ですが、いまだに旧西ドイツ地域の人は取られ続けています。
その他カトリック教徒やユダヤ教徒などが支払う教会税があります。
これは私はキリスト教徒ではないので支払っていないですが、調べたところ所得の8~9%を納めるらしいです。
どの宗教に加入しているかは、入社時に「給与支払い資料」を提出する際に自己申告します。
5年支払ったら、少額でも年金をもらえる権利が発生するのはいいと思う。
失業保険が1年間もらえるのも助かります。
そのようにもちろん良いところはありますが、やはり税金の割合が高い・・・
給与明細をみてため息をつくことも・・・
ちなみに日本と違ってドイツには「住民税」はありません。
そして、日本である定期券などの交通費や住宅補助などの非課税枠はありません。
交通費でも住宅補助でも等しく課税対象なので、特にそのような制度も設けません。
ドイツの2種類の健康保険【法的健康保険/プライベート健康保険】
ドイツには2種類の健康保険があります。
- 「国の法的健康保険」と「プライベート健康保険」
- どちらの保険も医療費は基本的に無料。ただし歯医者は例外で、いい素材や治療方法を選ぶとかなり高額になることも。
法的健康保険とプライベート健康保険の何が違うかはひとことで説明することはできません。
というのも、法的健康保険は誰に対しても同じサービス内容ですが、プライベート健康保険はサービスの内容を自分で決めることができるからです。
しかし傾向として、一般的には、プライベート健康保険の方が医者の予約が取りやすいとは言われています。
サービス内容も、プライベート健康保険の方がよいと言われることもあります。
サラリーマンは法的健康保険
基本的にサラリーマンは「法的健康保険」に加入しなくてはいけません。
ただし例外があり、給与が一定額を超えている人はプライベート保険を選択することもできます。
しかし該当する人が少ないこと、保険料の個人負担額が増えることなどから、サラリーマンでプライベート健康保険加入者はほとんどいません。
学生や個人事業主はどちらの保険も選べる
学生や個人事業主はどちらの健康保険を選ぶこともできます。
学生の法的健康保険料は優遇措置があり、特に20代のうちは安く設定されていますが、30歳を過ぎると急に値上がりをします。
そのため30歳を超えるとプライベート保険の方が安くなることもあります。
それらを踏まえて学生はそれぞれ自分によい保険を選びます。
一方個人事業主は、学生のような優遇措置はありません。
各自自分の年齢や健康状態を考慮してどちらか選択することになります。
どちらの保険にするか選択する際に、気を付けなくてはいけないことがあります。
それは「法的健康保険からプライベート健康保険への移行はできるが、その逆は難しく時には拒否されることもある」ということです。
その理由として、法的健康保険料は「収入の割合」で決められるのに対して、プライベート健康保険料は「年齢と健康状態」によって決められる、ということが挙げられます。
予約をとるのがスムーズで、サービス内容もよいといわれているプライベート健康保険ですが、このような違いを考慮し、法的保険を選ぶ事業主もいます。
しかもプライベートに決めたら法的健康保険に後戻りできない!
これはよく考慮して決定した方がいいね。
病気に関する概念の違い【歯医者とそれ以外】
ドイツでは、法的保険でもプライベート保険でも基本的には無料で医者にかかれます。
病気になっても無料で治療が受けられるという安心感はとても大きいです。
そのため生死に関わる大きい病気になってしまった時でも、祖国に戻らずドイツでの治療を選択する人も大勢います。
日本人もその限りではありません。
そんなドイツですが、歯の治療だけはとても高いのです。
多くのドイツ人が1年に1度は自分のかかりつけの歯医者に検診に行きます。
もし、定期検診を怠って虫歯になった場合、通常より高い治療費が要求されるのです。
それでも歯の治療が必要になった場合、特に複数の歯が虫歯になったり、差し歯や入れ歯が必要な時、簡単に数百ユーロ、時には数千ユーロの治療費が要求されることがあるのです。
そのため、歯の治療費のためにクレジットを組む人、治療がうまくいかなかったために裁判を起こす人など、歯の治療費の高さは本当に驚くばかりです。
なぜ歯の治療費だけそれほど高いのかというと、ドイツでは根底に「虫歯は病気ではない」という考え方があるからのようです。
初めてこの根拠を聞いたときはびっくりしました。
でもちょっと「うまいこと言うなー」と腑に落ちる点もありました。
確かに私も常日頃「人間には自然治癒能力があるから。だから医者も薬もなるべく避ける」生活をしているのですが「歯だけは別」と思っていたからです。
歯医者に行って治療しないとひどくなっていくだけだもんね。
でも、歯の不具合は自分で気を付ければ防げるもの。
定期検査や、普段のケアを怠っている人が歯が悪くなるのは自分の責任だから、それなりの治療費を払うのが理にかなってる。
歯もどんなに気を付けて磨いても虫歯になる人はいますし、そんなに神経質にケアをしなくても虫歯にならない人もいます。
ですから、この考え方が妥当かどうかはともかく、とりあえず歯の治療費が高い根拠の一つにはなっているみたいです。
おまけ【ドイツの2種類の消費税】
社会保障制度とは直接関係ありませんが、ドイツで生活しているとどうしても関係してくる「消費税」について少し説明します。
ドイツの消費税は生活必需品にかかる税率と、それ以外の物にかかる税率の2種類があります。
生活必需品にかかる消費税が7%、それ以外が19%です。
すべて内税なので、ぱっと見どの商品がどちらの消費税を適用されているのか気が付かないときもあります。
7%と19%の境目はときどき不思議な場所に現れます。
例えば食事をするときに、お持ち帰りの場合の消費税は7%なのですが、お店で食べる場合は19%になります。
お店側はレジに7%か19%か記帳義務があるので、お客さんは店内で食べるかお持ち帰りか必ず質問されます。
消費税が違うので、店内で食べる時とお持ち帰りの時の価格が少し違うお店もあります。
もちろんどちらも同じ価格のお店もあります。
お持ち帰りの方が消費税が少ないといっても、お持ち帰り用の容器や食事の量など、他のところに費用がかかることもあるからです。
このように、消費税は思わぬところに境目があって、注目してみると結構面白いものです。
ドイツの社会保障制度まとめ
ドイツの社会保険の仕組みについてご説明しました。
税金が高い代わりに弱者に対するセーフティネットがしっかりしていること、東西ドイツの地域差があることなどがわかって頂けたかと思います。
生活必需品は消費税7%、その商品は19%に分けるなど、誰もがある程度の生活の保障が受けられる仕組みを目指しているのがわかります。
ドイツが移民に寛容なのも、多くのドイツ人にこのような考えが根付いているからかもしれません。
なんだか、色々な要素が組み合わさってできてるパズルみたい。
当ブログの人気記事「ドイツ語会話で必要な文法はこれだけでいい!」を改良し、わかりやすくまとめました。
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ハイデルベルク大学修士卒業・ハンブルクの企業で代表を務め、社内ベンチャーで異業種起業をして繁盛店にする。
記事執筆・翻訳通訳・ドイツ語個人レッスン経験あり。
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