今回はドイツの大学制度の改革について説明します。
私がドイツの大学で学んだ時期は(2003年ー2009年)、
ちょうど大学を含むドイツの教育制度の改革の時期でした。
大学制度が、”修士→博士課程”から、日本やアメリカのように
”学士→修士→博士課程”に変更されることになったのです。
”修士課程”→”学士・修士”コースへ
私が大学に入学した2003年当時、ドイツの大学は、日本でいう学士課程は存在せず、最初から修士課程のみでした。
修士とは日本でいう、大学院の2年目までの終了のことです。
日本の大学: 学士課程(大学4年修了)→ 修士課程(大学院2年)
ドイツの大学: 修士課程 (卒業まで6-7年)
日本の大学院2年生までの勉強が詰まっているわけですから、カリキュラムも多く内容も濃いものでした。
基本的に学びたい人だけ学べばいいという姿勢で、授業の発表や試験のテーマなど、
各個人が教授と話し合って決めることも多く、何事も各学生の自主性を重んじる傾向が強かったです。
当然自分から能動的に動かないと単位は取れません。
教授との面接時間は多くて週に一度、せいぜい10分、そこで最大限の助言を得るために、事前に本を何冊も読んで考え、うまく説明できるようにレジメ文書を用意し、準備にはかなり時間をかけます。
もちろん大変勉強にはなるのですが、その反面、現実には困ることもありました。
主に以下の点です。
・非常に効率が悪い
学生一人一人が教授との面接で別々のテーマを決めるのは教授の時間を取りすぎ、非常に効率が悪い。
・待ち時間が長すぎる
学生が面接時間に押し寄せるので、待ち時間がとても長い。
・正しい決定ができない
各個人がそれだけ時間をかけているのに、学生の専門知識不足で決まったテーマはどの学生も似たようなものになってしまう。
これがドイツのやり方、習うより慣れろ、テーマが決まるまでに時間がかかりすぎ、肝心の作業に取り掛かるのが遅れたり、どんなに考えても大したテーマが出てこなかったり色々弊害がありました。
しかもこれはただの一例で、一事が万事この調子です。
事務手続きもなかなかスムーズに進まないことも多かったです。
自主性もいいけど、基礎学科の間は、せめて教授側である程度テーマを絞って、各学生はその中から選ぶ形にしたほうがいいんじゃないかと思ったりしてました。
ドイツの大学制度の問題点
さらにそのころドイツでは、このような大学制度の機能性の問題もさることながら、
もう一つ、大学制度そのものについての根本的な問題点も話題になっていました。
それは大きく分けると次の二つです:
① スピードと効率重視の国際社会の競争についていかれない
-卒業後社会に貢献できる頃には30歳近くになっており、時間がかかりすぎる。
-大学を卒業するまで6年も7年もかかるのは長すぎる。
② 財政的負担が大きい
-ドイツは基本的に大学の学費は国が負担する。
-にも拘わらず長い修士課程の中で途中で中退する学生も多い。
このような問題点の改善を目指して、移行期を経て、ドイツの大学制度はアメリカや日本と同様、単一の修士課程を廃止し、学士課程と修士課程の二つに分かれました。
学士導入後、当初は、学生からは
短い時間に決められたカリキュラムが詰まっていて、
ー自分の学びたいことを勉強する余裕がない
ー時間が限られているので、一つのテーマを深く追及できない
などの声も上がりました。
しかし、新しい制度の導入により、少なくとも
大学進学率は確実に増加しました(10年間で30%以下が40%以上へ)。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2013/04/17/1333454_11.pdf (文部科学省資料より)
ここでは主にドイツの大学制度に焦点を当てましたが、本当は大学制度だけに限らず、
ドイツの教育制度全般に大きな課題があります。
これらの改革はすぐ成果が出るという性格のものでもなく、
しかもドイツという国の性格上、改革はある程度各州の裁量に任されており、
制度変更も一枚岩とはいきません。
難しい課題ですし今後もこれらの点を踏まえて、少しでも問題が減少するように様子をみていくしかないと思います。
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ハイデルベルク大学修士卒業・ハンブルクの企業で代表を務め、社内ベンチャーで異業種起業をして繁盛店にする。
記事執筆・翻訳通訳・ドイツ語個人レッスン経験あり。
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