冷蔵庫から突然消えるソースの意味【語用論(プラグマティック)】

ドイツのハイデルベルク大学での主専攻は【ドイツ語言語学】でした。

日本での専攻が心理学だったので、心理学を学ぼうと思ったのですが、厳しい受け入れ人数制限に合い断念・・・

それで言語学を主専攻に選んだのでした(ちなみに副専攻はドイツ文学と日本学)。

fujiko

fujiko

人間の思考は自分の身についている言語で考えるわけだし、人に思ったことを伝える時も結局言語を使う。

心理学と言語学って、そういう意味で深くつながっているんじゃないかな。

と思って、興味を持ったわけです。

怪しいドイツ語能力、言語学基礎知識なし、ちょっと固くなりかけの脳みそw・・・

でも言語学専攻はよい選択肢だったと思っています。

今回はその中で言語学の中で自分が面白いと思ったものを簡単にご紹介します。

初めまして、Fujikoです。 札幌出身・魚座・O型 本好き・漫画好き(ただし日本語に限る) テニス好き。高校時代は3年間弓道...

 

言語学研究の前提の前提

言語学は学問として本当に不思議な分野。

研究としては今でも、過去から現在に至る【時間的な言語の変化】を研究の対象に入れないのが主流です。

friend

friend

えー、だって、言語って日に日に変わっていってるよね?

技術の発達によって新しい単語が出てきたり、文法だって長い目で見たら変わってる。

平安時代の日本語と今の日本語なんて全然違うよ。

それなのに、そこを全く考慮に入れないで研究進めちゃっていいの?

fujiko

fujiko

んー、まあそうなんだけどさ、でもそれを言ったらややこしくて研究なんてできないし・・・

それにさ、ちょっと考えてみてよ。

今生まれた赤ちゃんは、過去の言語の歴史なんて何も知らないんだよ、なのに言語を取得していく。。。

ってことは、今の言語を研究するのに、過去の歴史は考慮に入れなくても大丈夫ってことにならない?

だって、過去のことを知らなくたって、今の言語は言語として成り立ってるし、習得できるんだよ。

過去の言語の歴史がどうでも、現在の言語はその影響なしに独立して存在してるってことじゃん。

friend

friend

んー、確かに・・・???そうなのか???

なんかちょっと騙されてるような気がしないでもないけど・・・

ちょっと変な気がしないでもない、でも実際の言語の研究分野では長い議論の末、本当にそうなっています。

言語学で研究は、歴史的な変化を考慮にいれない、その時代を縦に切り取った分野にしよう、という不文律があるのです。

言語の役割って”意味”を伝える事では?

言語の役割はそもそも言葉の”意味”を伝える事。

自分で一人で考えるにしろ、人に何かを伝えるにしろ、言葉でも文章でも、とにかく言語を単なる”音”と明確に区別するのは、【その響きに意味があるか、ないか】。

fujiko

fujiko

音の響きに意味のあるものが言語、ないものは雑音。

これが言語の定義だよ、そう思わない?

friend

friend

んー、まあ、異論はないけど・・・

fujiko

fujiko

それなのに!

言語学の研究分野には、それが持つ”意味”をまるっきり無視して見えている”形”にだけ拘って、深ーく研究する分野が存在しているの。

なんか本末転倒意味不明な気がしない???

friend

friend

んー、まあ確かに。。。

でもこれもまた事実で、実際あくまで言語の形や並び、つまり目に見える部分にだけ注目した研究分野が存在します。

【だって、一つ一つ意味追ってたら切りがないし、研究なんてできないよ by研究者】

えー、でもその”意味”こそが言語の存在意義なのに~。。。

 

意味論と語用論で語る【冷蔵庫にソースがない】の意味

さらにさらに、言語っていうのは確かに意味を伝えるものなんだけど、意味って言っても実は2種類あるのはご存知ですか。

1. 言葉そのままの意味。状況で変化しない現象。→意味論の研究対象

2. 言ったことはそのままでも、いつどこで言われたか、状況によって変化する現象。→語用論の研究対象

fujiko

fujiko

【Fujikoさんは、2018年の8月18日の20時にハンブルクのレストランで食事をしました。】

【私は、今日ちょうど一時間前にハンブルクのレストランで食事をしました。】

最初の文は明日もう一回言っても意味が変わらないけど、二つ目の文は、誰がいつ言うかによって、全然意味が変わっちゃうよね。

今の私にとってはまったく同じ意味なのに( ̄▽ ̄)。

friend

friend

あー、なるほど、確かにそうだ。

こういう違いってなんか、面白いね。

fujiko

fujiko

でしょ~。

結局言語っていうのは実際使われてなんぼだから、実際の実用と切り離して文法や意味を研究しても、それこそ”意味ない”し、そもそも言語の本質の理解ができるわけがない、っていう考えもあるわけ。

このように、使われる”言語表現”と、それを実際使った人や文脈やその場の状況との関係を研究しようという研究分野もあるわけです。

fujiko

fujiko

そういう分野を言語学で”語用論”っていうんだけど、その時の行動や視点、シチュエーションが違うと、同じこと言ってるのに意味がまるで違っちゃって面白いの

friend

friend

ふーん、例えばどんな?

fujiko

fujiko

例えば、私があなたに、「明日テニスのレッスンに行く?」って聞いたらどういう意味だと思う?

なんて答える?

friend

friend

明日?

テニス行くよ。

fujiko

fujiko

だめだなー、それじゃそのまんまの答えじゃん。

言語を【意味論】的にしか解釈してないね。

【語用論的】解釈をしてください

friend

friend

えー、そんなこと言われたってわかんないよ(*_*;::

fujiko

fujiko

はい、正解は、、、

【明日、テニスコートまで送って】とお願いしているのです。

friend

friend

そんなんわかるか!

それにそれ、お願いっていうより命令に近い…(=_=)

fujiko

fujiko

なんか言った( 一一)?

こんな風に、質問の形をとっているけど、状況によって、実は意図しているのは全然違う意味っていうのが語用論。

【意味論】が言葉そのままの意味の研究をしていくのに対して、【語用論】の研究対象は実際のシチュエーションが絡んで言葉そのもののとらえ方が変わっていく現象というのが興味深い。

よくある典型的な【語用論】的な会話:

奥さん「ねえ、冷蔵庫にあるソース取ってきてくれない」

旦那「おーい、ソースなんてないよ、どこだ?」

奥さん「そこにあるでしょ」

旦那「そこってどこだよ」

奥さん「ほら、ドア開けてすぐの目の前」

旦那「だから、ないから聞いてるんだけど~」

奥さん「だからー、、、ほら、あるじゃん、ここに。どこ見てるのよ、一体」

旦那「あれ???」

これも意味論で見ると、目の前にあるソース見えないなんて、旦那ありえない、としか思えませんが、語用論的に見ると、つまり【俺はソースなんか取りに行きたくない】とアピールしているのが丸わかりです。

まあ、実生活で言われたほうは、意味論だろうが語用論だろうが、同じように腹が立つのには変わりないでしょうが(-.-)…

fujiko

fujiko

ねー、冷蔵庫のビール冷えてる?

friend

friend

あ、これは俺にもわかった、それは質問じゃなくて、【ビール取ってこい】っていう命令だ!

fujiko

fujiko

いやいや、命令じゃなくて”お願い”って言ってくれない?

でも語用論の意味はあっている(^^)。

正解です、ありがとー!

 

言語学こうやって見るとなかなか面白いものです。

ドイツ語もこうやって覚えていけば楽しいかもしれませんね。

 

私がドイツ語を勉強したのは、この辞書。

これ一冊手元にあればドイツ語学習本当にはかどります。お勧めです。

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ハイデルベルク大学修士卒業・ハンブルクの企業で代表を務め、社内ベンチャーで異業種起業をして繁盛店にする。

記事執筆・翻訳通訳・ドイツ語個人レッスン経験あり。

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