ドイツ語の【前置詞】と言ったら、何を思い浮かべますか。
“in” とか”auf”とかよく聞くけど・・・
例えば、”in”は「~の中に」とか”auf”は「~の上に」などを表します。
このように、名詞の前にきて「てにおは」では表現しきれない複雑な意味をつけ足してくれる言葉を【前置詞】と言います。
今回は、生徒さんからのリクエストでドイツ語の【前置詞】についてご説明します。
とは言っても【前置詞を制すものはドイツ語を制す】と言われるくらい、上級者にとっても前置詞は難しいのです。
完ぺきを目指すと袋小路に入ってしまい、時間ばかりかかってちっとも使えるようにならない、という袋小路に入ってしまいます。
それを避けるためにも、できるだけわかりやすく説明しようと思います。
前置詞と格の関係
最初に【前置詞と格】の関係についてご説明します。
ドイツ語の“格”というのは、日本語の【て・に・を・は】にあたるもので、1格から4格まであります。
【ある名詞のどの格を表現しているか】というのは名詞の前につく”定冠詞”をみるとわかります(英語のTheにあたる)。
ただ、英語と違ってドイツ語の名詞は【男性名詞・中性名詞・女性名詞】の三つに分かれるので、定冠詞も三つあります。
更に3つの名詞に共通する【複数形の定冠詞】もあります。
それぞれの名詞の性に、1格から4格までの4種類の定冠詞、そしてそれが三つの名詞の性と複数形をあわせた4種類分あるわけです。
この定冠詞の活用表は、ドイツ語の勉強をしている人は見たことのある表だと思います。
ドイツ語の格/定冠詞 | 男性名詞・中性名詞・女性名詞・複数形(共通) |
---|---|
1格(主格~は) | der・das・die・die |
2格(所有格~の) | des(s)・des(s)・der・der |
3格(目的格~に) | dem・dem・der・den |
4格(目的格~を) | den・das・die・die |
そして、前置詞というのは、先ほどの【in: “~の中に”】や【auf: “~の上に”】など、名詞の格変化だけでは、表現できない複雑な意味をつけ足してくれるものです。
ドイツ語の前置詞はいくつくらいあると思いますか。
in,auf, von, nach, zu, vor, hinter,aus, gegen, über,statt…
これで11個か。
もっとあるかな。。。
まあまあかな。
知らなかったです。
全体の文がどんな形であろうと、「前置詞mitの後ろは常に3格の名詞」がきます。
これは、文法的な決まりなので、文全体の意味とは無関係です。
“mit”は「~と一緒」という意味がある。
そして3格は「~に」という意味を表す。
だとすると、”mit+3格”で「~と一緒に」という意味だと思うのですが、違うのでしょうか。
文が前置詞を持つ場合、3格は「~に」という意味を失うことが多いです。
文の意味はもっぱら前置詞にゆだねられ、3格は単純に3格という文法の形式を持つだけのことが多いです。
いいことを知りました。
そういうときに、これは3格だから「~に」という意味だと思っていると、文の意味がわからなくなってしまうので、気を付けてください。
それではこれから、どの前置詞がどの格と結びつくのか説明します。
前置詞+4格の組み合わせ
最初はいつも4格と結びつく前置詞の説明をします。
4格と結びつく前置詞はそれほど多くありません。
よく使われる前置詞が多いですし、前置詞の意味もはっきりして分かりやすいものが多いので、最初に覚えてしまいましょう。
常に4格と結びつく前置詞:
- durch「~を通って」: durch den Wald 森を通って
- entlang「~を沿って」: den Fluss entlang (entlang は名詞の後ろ)川に沿って
- für「xxのために」: für dich 君のために
- gegen「xxに対して」: gegen den Baum 木に向かって
- ohne「xxなしに」: ohne Auto (定冠詞がつかない場合も) 車なしで
- um「xxの周り」: um den Turm 塔の周り
これは覚えるしかないよね。
頑張ろうっと。
前置詞+3格の組み合わせ
次は、いつも3格と一緒に使われる前置詞についてです。
前置詞と3格は一番使われる組み合わせです。
前置詞も頻繁に出てくるので、すでに知っているものも多いかもしれません。
ちょっと数は多いけれど、頑張って覚えてしまいましょう。
先ほど勉強したように、4格支配の前置詞の数はそれほど多くありません。
ですからもし迷ったら「わからない前置詞は3格」と思ってもいいかもしれません。
とにかく前置詞の数としても、使われる頻度としても一番多いですから。
実際、半分知っているだけでもずいぶん違うと思うし。
常に3格と結びつく前置詞:
- aus「~から」(中から外への方向を示す): aus dem Zimmer 部屋から(外の方へ)
- außer「~以外は」: außer dem Haus 家以外で
- bei「~のそばで」: beim (bei dem) Fenster 窓のそばで
- entsprechend「~に相応して」: entsprechend dem Alter 年齢に応じて
- gegenüber「~の向かい側に」: gegenüber dem Bahnhof 駅の向かい側に
- gemäß「~に従って」(後置が多い): unserem Wunsch gemäß 私たちの希望通りに
- mit「~と一緒に」: mit dir 君と一緒に
- nach「~の方へ」: nach München ミュンヘンへ
- von「~から」(移動の出発点) : von Hamburg ハンブルクから
- zu「~の方に向かって」: zur Stadt 町へ
- seit「~以来」(xxから現在までずっと): seit dem 1. August 8月1日から(今まで)
でもここでは、一番代表的な意味だけに絞ってあります。
そんなにたくさん一度に覚えきれないもん。
最初は一番大切な意味を覚えて、それからだんだん広げていけばいいですよ。
3格と4格両方と結びつく前置詞
ここまで3格か4格と結びつく前置詞の紹介をしました。
でもドイツ語の前置詞には、3格と4格どちらか一つではなく、両方と結びつく前置詞があります。
そのような前置詞はこの9つだけなので、覚えておいてくださいね。
【前・後ろ・上・下】など位置関係を表す前置詞ばかりなので、比較的覚えやすいと思いますよ。
前置詞+3格の時は【wo/どこで(に・を)】という場所を表すときに使います。
前置詞+4格の時は【wohin/どこへ】という方向や移動などの動き表すときに使います。
例えばどんな風にですか?
つまり、これらの前置詞が文の中で、どの動詞と一緒に使われているかで3格か4格か決まるのです。
これは、絵が動かず壁という”場所”にあるので、3格を使います。
それに対して【Sie steckt den Ring an den Finger/彼女はリングを指にはめた】というのは、指になかったリングを指に移動させた、ということで“方向・動き”を表しています。
なので4格を使います。
”かかっている”というのは場所の状態を表しているし、”はめる”というのは移動を含んでいますね。
はっきりわからないときは、質問してみるのもいい方法です。
先ほどの例でいうと【絵はどこにありますか?】
あー、確かに【どこに】という場所を表していますね。
この場合【絵はどこへありますか?】と方向を聞くと意味が変ですよね。
逆にリングの場合は【彼女はリングをどこへはめましたか】と【~へ】という方向を示す質問をすると【指へ】という答えが返ってきます。
【彼女はリングをどこではめましたか】と場所を質問すると正しい意味になりません。
説明を聞くと、今はなんとなくわかった気がするけど、なんだか自信がない。
すぐ忘れちゃいそう。。。
3格4格両方と結びつく前置詞: 前置詞+3格(wo/どこ)
- an「~のそばに」(接して): Viele Äpfel hängen am Baum / たくさんのリンゴが木になっている
- auf「~の上に」(直接触れる): Ein Buch liegt auf dem Tisch/一冊の本が机の上に乗っている
- hinter「~の後ろに」: Es liegt ein Buch hinter dem Tisch/本が一冊机の後ろにある
- in「~の中に」: Er lernt im Zimmer/彼は部屋で勉強している
- neben「~の隣に」: Neben dem Büro befindet sich ein Hotel/事務所の隣にホテルがある
- über「~の上に」(直接触れない):Über dem Tisch hängt ein Bild/机の上の方の壁に絵が掛かっている
- unter「~の下に」: Ich stehe unter dem Baum/私は木の下に立っている
- vor「~の前に」: Vor dem Rathaus steht ein Restaurant/市庁舎の前にレストランが建っている
- zwischen「~の間に」: Zwischen mir und dir sehe ich ein Baum/私と君の間に木が見える
3格4格両方と結びつく前置詞: 前置詞+4格 (wohin/どこへ)
- an「~のそばへ」(接して): Er nimmt den Hund an die Leine / 彼は犬をひもにつなぐ
- auf「~の上へ」(直接触れる): Er bringt das Buch auf den Tisch/彼は本を机の上に持ってくる
- hinter「~の後ろへ」: Er geht hinter das Haus/彼は家の裏にまわる
- in「~の中へ」: Er geht ins Kino/彼は映画館に行く
- neben「~の隣へ」: Es trifft neben das Ziel/的を外す
- über「~の上へ」(直接触れない): Er hängt ein Bild über den Tisch/彼は絵を机の上の方の壁に掛ける
- unter「~の下へ」: Ich stelle den Tisch unter die Lampe/私はランプの下にテーブルを置く
- vor「~の前へ」: Er tritt vor den Spiegel/彼は鏡の前へ歩み寄る
- zwischen「~の間へ」: Ich stelle den Tisch zwischen die Tür und den Schtul / 私はテーブルをドアと椅子の間に置く
例題をたくさん見たり、自分で使ってみたり、繰り返すうちにだんだん感じがつかめてきます。
前置詞+2格の組み合わせ
最後は、2格と結びつく前置詞です。
なんと、前置詞が37個もありました。
無理無理、もう覚えられない~!
37個の前置詞全部いいましょうか?
もういらないよー!
そもそも2格は3格や4格に比べて、使われる頻度が少ないんですよ。
それなのに、前置詞の数が一番多いなんて、先生もびっくりです。
頻度の少ない2格はそんなに覚えなくていいです。
そのかわり3格や4格をばっちり覚えてください。
前置詞+2格の組み合わせ: よく使われるもの
- während「~の間に」: während meines Urlaubs 私の休暇中に
- außerhalb「~以外に」: Außerhalb der Arbeitszeit 勤務時間外に
- aufgrund「~に基づいて」: aufgrund der Forschung 研究に基づいて
- wegen「~のせいで」: wegen der Krankheit 病気のせいで
- trotz「~にもかかわらず」: trotz des schlechten Wetters 悪天候にもかからわらず
- statt「~の代わりに」: statt eines Briefes 手紙の代わりに
ドイツ語の前置詞【まとめ】
ドイツ語の前置詞、なんとなくでもどんなものだかわかってもらえましたか。
ここに前置詞について今まで説明したことをまとめます。
前置詞の役割: 3つのポイント
名詞の格変化だけでは、表現できない複雑な意味をつけ足してくれるもの
文の意味は前置詞にゆだねられ、3格は単語の意味を失い、文法の形式の意味だけになる
それぞれの前置詞は決まった格と結びつく
常に4格と結びつく前置詞:
- durch「~を通って」: durch den Wald 森を通って
- entlang「~を沿って」: den Fluss entlang (entlang は後ろに)川に沿って
- für「xxのために」: für dich 君のために
- gegen「xxに対して」: gegen den Baum 木に向かって
- ohne「xxなしに」: ohne Auto (定冠詞がつかない場合も) 車なしで
- um「xxの周り」: um den Turm 塔の周り
常に3格と結びつく前置詞:
- aus「~から」(中から外への方向を示す): aus dem Zimmer 部屋から(外の方へ)
- außer「~以外は」: außer dem Haus 家以外で
- bei「~のそばで」: beim (bei dem) Fenster 窓のそばで
- entsprechend「~に相応して」: entsprechend dem Alter 年齢に応じて
- gegenüber「~の向かい側に」: gegenüber dem Bahnhof 駅の向かい側に
- gemäß「~に従って」(後置が多い): unserem Wunsch gemäß 私たちの希望通りに
- mit「~と一緒に」: mit dir 君と一緒に
- nach「~の方へ」: nach München ミュンヘンへ
- von「~から」(移動の出発点) : von Hamburg ハンブルクから
- zu「~の方に向かって」: zur Stadt 町へ
- seit「~以来」(xxから現在までずっと): seit dem 1. August 8月1日から(今まで)
3格4格両方と結びつく前置詞: 前置詞+3格(wo/どこ)
- an「~のそばに」(接して): Viele Äpfel hängen am Baum / たくさんのリンゴが木になっている
- auf「~の上に」(直接触れる): Ein Buch liegt auf dem Tisch/一冊の本が机の上に乗っている
- hinter「~の後ろに」: Es liegt ein Buch hinter dem Tisch/本が一冊机の後ろにある
- in「~の中に」: Er lernt im Zimmer/彼は部屋で勉強している
- neben「~の隣に」: Neben dem Büro befindet sich ein Hotel/事務所の隣にホテルがある
- über「~の上に」(直接触れない):Über dem Tisch hängt ein Bild/机の上の方の壁に絵が掛かっている
- unter「~の下に」: Ich stehe unter dem Baum/私は木の下に立っている
- vor「~の前に」: Vor dem Rathaus steht ein Restaurant/市庁舎の前にレストランが建っている
- zwischen「~の間に」: Zwischen mir und dir sehe ich ein Baum/私と君の間に木が見える
3格4格両方と結びつく前置詞: 前置詞+4格 (wohin/どこへ)
- an「~のそばへ」(接して): Er nimmt den Hund an die Leine / 彼は犬をひもにつなぐ
- auf「~の上へ」(直接触れる): Er bringt das Buch auf den Tisch/彼は本を机の上に持ってくる
- hinter「~の後ろへ」: Er geht hinter das Haus/彼は家の裏にまわる
- in「~の中へ」: Er geht ins Kino/彼は映画館に行く
- neben「~の隣へ」: Es trifft neben das Ziel/的を外す
- über「~の上へ」(直接触れない): Er hängt ein Bild über den Tisch/彼は絵を机の上の方の壁に掛ける
- unter「~の下へ」: Ich stelle den Tisch unter die Lampe/私はランプの下にテーブルを置く
- vor「~の前へ」: Er tritt vor den Spiegel/彼は鏡の前へ歩み寄る
- zwischen「~の間へ」: Ich stelle den Tisch zwischen die Tür und den Schtul / 私はテーブルをドアと椅子の間に置く
前置詞+2格の組み合わせ: よく使われるもの
- während「~の間に」: während meines Urlaubs 私の休暇中に
- außerhalb「~以外に」: Außerhalb der Arbeitszeit 勤務時間外に
- aufgrund「~に基づいて」: aufgrund der Forschung 研究に基づいて
- wegen「~のせいで」: wegen der Krankheit 病気のせいで
- trotz「~にもかかわらず」: trotz des schlechten Wetters 悪天候にも拘わらず
- statt「~の代わりに」: statt eines Briefes 手紙の代わりに
ドイツ語の格/定冠詞 | 男性名詞・中性名詞・女性名詞・複数形(共通) |
---|---|
1格(主格~は) | der・das・die・die |
2格(所有格~の) | des(s)・des(s)・der・der |
3格(目的格~に) | dem・dem・der・den |
4格(目的格~を) | den・das・die・die |
辞典の大切さ
真剣にドイツ語の勉強をしている人は、良い辞典を一冊持っていると効率よく勉強できます。
よい辞典のポイントは、例題がたくさん載っていること!
自分が言いたい表現の参考になります。
私も最初は薄い辞書を買ったり、頂いた辞書を使ったりしていましたが、最後には結局小学館の独和大辞典コンパクト版を買いました。
使ってみると、単語の説明も詳しく、例題もたくさん載っていて「最初からこの辞典を買っておけばもっと効率よく勉強できたなあ」とちょっぴり後悔しました。
新しい辞典が欲しい、そろそろステップアップの時期、どの辞典を買おうか迷っている、という人はぜひ手に取ってみてください。
それだけの価値はあります。
当ブログの人気記事「ドイツ語会話で必要な文法はこれだけでいい!」を改良し、わかりやすくまとめました。
テキスト部分と学習ノートの2部にわけ、例文も盛りだくさんです。
最短で効率よく実用ドイツ語をマスターするために、ぜひお役立てください。
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オプションで、テキストに関する質問、その他ドイツ生活に関する質問も受け付けています。
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ハイデルベルク大学修士卒業・ハンブルクの企業で代表を務め、社内ベンチャーで異業種起業をして繁盛店にする。
記事執筆・翻訳通訳・ドイツ語個人レッスン経験あり。
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